2019年10月22日行われた「即位礼正殿の儀」の安倍首相の万歳。
その手の平の向きが当時ネット上で話題になりました。
なぜかというと、その姿が太政官布告「万歳三唱令」にそっくりだったからです。
天下の太政官布告に書いてあるように万歳して何がおかしいの?
ってところですが、実はその万歳三唱令にニセモノ疑惑があるのです。
安倍首相はどんな万歳をしていたの?
即位礼正殿の儀の時、安倍首相はどんな万歳をしていたのか?
報道された写真等を見ると、背筋と腕をまっすぐに伸ばし、手の平はきれいに内側を向いて指までまっすぐ。
ラジオ体操に似てるポーズがあったような・・・
こんなきれいな万歳、足の先から指の先まで形を意識してしないと出来ないと思います。
もしかしたら太政官布告「万歳三唱令」を読んで、鏡の前とかで練習なさったかもしれませんね。
太政官布告「万歳三唱令」とは
「万歳三唱令」というのは、万歳三唱の正しいやり方を記した明治12年4月1日施行 太政官布告第百六十八号という文書のことです。
文書もカタカナと漢字を使って書かれており、パッと見ではいかにも明治時代のお役所文書っぽい感じに出来ています。
萬歳三唱令
施行 明治十二年四月一日
太政官布告第百六十八号
第一条 萬歳三唱ハ大日本帝国及ビ帝国臣民ノ天壌無窮ノ発展ヲ祈念シ発声スルモノトス
第二条 発声二アタッテハソノ音頭ヲトルモノハ気力充実態度厳正ヲ心掛ケルベシ
マタ唱和スル者ハ全員ソノ心ヲ一ニシテ声高ラカ二唱和スルモノトス
第三条 唱和要領ノ細部二ツイテハ別二定ム
萬歳三唱ノ細部實施要領
一 萬歳三唱ノ實施二アタッテノ基本姿勢ハ直立不動ノ姿勢ナリ コノ際 両手指ヲ真ッ直ク下方二伸バシ躰側二シッカリツケルモノトス
二 「萬歳」ノ發聲ト共二右足ヲ半歩踏ミ出シ同時二両腕ヲ垂直二高高ト擧ゲルベシ コノ際両手指カ真ッ直クニ伸ビカツ両掌ヲ正シク内側二向ケテオクコトガ肝要ナリ
三 「萬歳」ノ發聲終了ト同時二素早ク元ノ姿勢二戻スベシ
四 以上ノ動作ヲ両三度繰リ返シテ行ウベシ イズレノ動作ヲ取ル二アタッテモ節度ヲ維持シ カツ気迫ヲコメテ行フコトガ肝要ナリ
細部実施要領の一に、「姿勢は直立不動」、二で「万歳の発生と共に右足を半歩踏み出し同時に両腕を垂直に高々と挙げるべし」「この際両手指が真っ直ぐに伸び、かつ両掌を正しく内側に向けて」とあります。
分かりやすい動画があります。
2分45秒当たりから実演されてます。
こういった文書が、1990年代には、北海道から九州まで全国に出回り、実際にこれに従い行われていたようで、国立国会図書館にも各地自治体から問い合わせが頻繁に行われていたそうです。
当時、君が代と日の丸が法制化されたこともあり、問い合わせ増加に拍車がかかったようです。
ところが実はこれまったくのニセ文書。
万歳三唱令なんて出されたことありません。
1999年12月には国会図書館から信じないよう、わざわざ呼びかけが行われていたことからも偽物であることに間違いありません。
万歳三唱令は一体だれが作ったのか?
長らく創作者がわからなかった「万歳三唱令」ですが、2017年12月ついに「実はわたしが・・・」と名乗り出る人が出てきました。
それは熊本日日新聞がたまたま2017年12月19日付朝刊で「万歳三唱令」について触れている記事を載せたことがきっかけでした。
その記事を読んだ創作者が匿名の手紙を寄せ、「万歳三唱令」を作ったのが自分たちであること、その経緯を告白してきたのです。
その手紙の差出人は「正萬会議事務局」とだけ名乗っていましたが、消印は熊本県内からのものだったそうです。
経緯は以下のとおりです。
「万歳三唱令」誕生のきっかけは1985(昭和60)年頃あった、「月例ゴルフコンペの打ち上げ」。一人が突然右足を踏み出して万歳したところ、大爆笑を呼んだことから、”面白い万歳”として仲間内で流行した。さらに周囲から問い合わせが続いたため文書化し、「どうせやるならもっともらしく」と文案を練り上げていった
熊本日日新聞 2017年12月27日付朝刊より
全く悪気はなく、酒席の締めを盛り上げる一発芸であったと述べています。
さらに2か月後の2018年2月創作者の3人が熊本日日新聞の取材に応じています。
創作者は現在2018年当時60~70代の元公務員の男性3人。
「正しい萬歳三唱を普及する国民会議」(正萬会議)の初代事務局長らで、「万歳三唱令」は酒席で出来たまったくの創作物であること。
3人は転勤などで熊本を離れた後も、転勤先で普及活動に励んでいたこと。
など驚愕の事実が明かされています。
まとめ
全国に広がり、ネット上も騒がした「万歳三唱令」は酔っ払いのおじさん達がお酒の席で創った一発芸でした!
選挙の時など万歳をテレビで目にするときは、もしかしたら「万歳三唱令」に忠実な万歳をしている人がいるかもしれませんね。